書評:『絵と言葉の一研究』寄藤文平著

 先日、Twitterかなにかで気になるタイトルの本があったので買って読んでみました。
それが、寄藤文平さんの『絵と言葉の一研究』です。
http://www.amazon.co.jp/%E7%B5%B5%E3%81%A8%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AE%E4%B8%80%E7%A0%94%E7%A9%B6-%E3%80%8C%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E3%80%8D%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%92%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E5%AF%84%E8%97%A4%E6%96%87%E5%B9%B3/dp/4568505070/ref=sr_1_5?s=books&ie=UTF8&qid=1390430005&sr=1-5

 本書を手に取るまで、寄藤文平さんのことは知りませんでしたが、日本たばこ産業の大人たばこ養成講座は知っていたので、寄藤さんのイラストはだけは知っていました。

 上記したように、寄藤さんは広告分野でのイラストや、アートディレクション、本の装丁などのブックデザインも手掛けている方です。


本書を読んで特に面白かったり気になった部分を抽出していきます。


・情報の2分類

僕は「情報」をふたつの形に分けている。
ひとつは「データ」
ひとつは「インフォメーション」。(p.14)

広告やイラストという情報を発信し相手になにかしら訴求しなければならない立場の寄藤さん。おそらく広告やイラストを「情報」として考えていくうちに、「情報」をふたつのかたちにわけて考えるようになったと思われます。
いわく「データ」とはただの事実で、そこに意味はなく、「CO2の排出量」という資料があればそれは「データ」。このデータを読み解き「CO2の排出量は20世紀終盤にものすごく増えた」といえばそれは「インフォメーション」となるそうです。

この関係は「空」はいつでも存在しているのに「悲しげな空」は誰かが見つけないと現れないのに似ている。「空」がデータ、「悲しげな空」がインフォメーションだと考えるとわかりやすい。(p.14)

イン(=与える)フォメーション(=カタチ)としてカタチが与えられたものを「インフォメーション」に分類しています。
この情報の分類は意外と意識が薄れてしまうことも多く、特にレポートや報告書、記録などを付けていくときに意識したいことです。インフォメーションを表わすためにデータを読み解くことを普段から鍛えていきたいです。


・31種類の装丁

広告など、クリエイティブな職業の人に対して気になるのは「アイデアはどこからくるのか」ということです。寄藤さんはこの質問をそのままの形で受け取るのではなく「デザインが仕上がっていくときの頭の中がみたい」と解釈し、実際に31種の装丁のイラスト案を書いて表現しています。
デザインのプロトタイプとして、寄藤さんの10年間のブックデザインの経験からでてきたというブックデザインを並べています。善し悪しではなく網羅的にアイデアを並べて、そのアイデアに対する感想のようなものが一言で載せられているので、企画などを考えるときの参考になりそうです。
「一度選択肢をひろげられるだけひろげると、こんなにもあるんだ」と思わされます。

・ブックレビューからみる本を読むときに大切な感覚
後半には寄藤さんによる7冊の本についてのブックレビュー(書評)が短めに書かれています。
その中の一つ、『世界をこんなふうに見てごらん』のレビューの中にこんな言葉があります。

すぐに良いと思える本は、実はすでに自分が知っていることを確認した本だったり、単純に役に立ちやすい知識が書いてある場合だったりするが、この本はどちらでもない。おそらく、これから知るに違いないことが書いてあるのだろう(p171)

この一節から本を読むときに何が重要なのかが読み取れます。もし本を読む機会が多い人は、「今自分が読んでいるこれは知っていることの確認なのか、これから知っていく・理解することについてのはじめのアプローチなのか」を考えてみてください。もし、知っていることの確認ばかりをして、「すごく勉強になった」などと思っていたとしたら、読書体験を考え直して方がいいかもしれません。


他に、重要な議論として「絵と言葉は対立しない」ということや「わかるとわかりやすさ」の違いについて自身の体験を実例に書かれています。
本を読んでて一番思ったことは「イラストがあってわかりやすいなあ」ということでした。絵と言葉について、わかりやすさをテーマに書かれている本で、この実感があることが一番の説得力になっています。
ぜひ読んでみてください。
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