書評:『デザインの骨格』山中俊治著

本日ビブリオバトル山中俊治さんの『デザインの骨格』を紹介したので、その原稿を公開します。
たいしたことないですしまったくこの通り話したわけではありませんのでそれだけご注意ください。

(以外原稿)

“ こんにちは。4年生の野崎です。

今日紹介する本はこちらの、山中俊治さんの「デザインの骨格」という本です。まずは著者の紹介から。山中俊治さんは、1957年生まれの工業デザイナーで、車や電車、カメラ、腕時計、そして大根おろしなどを、デザインしている方です。もしかしたらみなさんが今日ここに来るまでに使っているかもしれませんが、Suicaの改札機も、山中さんが原型をデザインしたものの一つです。

 

この本は山中さんが「デザインの骨格」という表題でWeb上に書き上げてきたブログをまとめたものになります。ジャンルで言うとエッセイに近いです。山中さんが普段考えていることやものを見るときの視点、ものをデザインする時のプロセスなどに触れることができます。

 

まずみなさんと共有したいのは、今回の話ででてくる「デザイン」という言葉はたんにオシャレなもの、芸術性の高いものという意味ではなく、人とモノの関わりを総合的に適正化する装置や設計のことをいいます。少し抽象的でわかりづらいと思うので、この本の内容からいくつか例を出していきたいと思います。

 

ここの帯にも書かれています、“なぜ、Suica改札機の読み取り角度は13.5度傾いているのか”ここに、デザインが設計によって人とモノの関わりを適正化するということが込められています。今では考えられないかもしれませんが、まだ自動改札機を普及させる前、実験的にSuicaの利用を行ってみると半数近くの人が通れなかったそうです。通過率は50%ですね。今のみなさんならどこにカードを当てれば良いのか、自動改札機に触れてから機械が反応するまでにほんの少し間があることも知ってます。でも当時はそんなコツなど誰も知らなかったのです。考えてみれば当たり前ですよね。今まで世の中になかったものですから。

 

   そこで様々な角度やイラスト、文字を実験的に試していくわけです。Suicaは先ほど言ったようにタッチしてから反応するまで少し間があります。そこでタッチの時に人々を一瞬立ち止まらせるにはどうしたらいいのかを追求します。その結果、人がそこにカードを触れさせると認識しやすく、また一瞬立ち止まらせることができることからSuica改札機の読み取り角度が13.5度になったそうです。もしかしたらメリックの入り口にも応用できるかもしれません。

 

つまりデザインというのは、その環境の中で最適に機能が発揮される設計のことだと理解できます。めちゃくちゃ身近なところでは、家の鍵をかけわすれないために鍵は玄関に置いておくってことも人と物の関係を最適化してるといえます。これだけきくと「なんだそんなこと当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、おそらく日常にはまだ気がついていないだけの当たり前が数多く存在します。本の中からもうひとつ例をあげます。

 この本の第1章は「アップルのデザインを解剖する」というタイトルになっています。そこでは実際にアップルのパソコンを解剖したり、パナソニックのLet's noteと比較すると薄くつくられているアップルのパソコンについて考えたりしています。その中にアップルのiPadを、まだ言葉を使えない1歳半の赤ちゃんがロックを解除し、写真や動画を見て楽しんでる状況がでてきます。普通に考えると、ボタンが2つ、3つはあったほうが使いやすくなるのですが、アップルの製品は「やってみればわかる」をコンセプトにデザインが設計されているから、言葉を理解していない赤ちゃんでも使える状況を生んだのかもしれないということです。これは、アップルが「やってみればわかる」というコンセプトを追求した結果生まれたデザインによるものです。

 

 まとめに入りましょう。本書のはじめににはデザインとは、「見ること、聞くこと」から始まると書いてあります。ものの形・構造を理解して、批判的にものをみることが重要だということです。ここでいう批判とはものごとを原点から捉え直すということです。普段ぼくらの見ている日常生活に新たな視点や疑問を加え、そして新たな発想の種にしていければと思います。この本の中には100以上の過去のブログが掲載されているのですが、今日紹介できたのは3つほどのエピソードなので、他にも驚くような内容が書かれていたりします。今回のビブリオバトルのテーマが「卒業」ということで、大学を卒業する自分自身へ、社会人になっても小さな視点の切り替えや身の回りの物に対する疑問をもつことで、人生を楽しむことができるということを忘れないためのメッセージとしてお話させていただきました。同時にみなさんの発想に刺激を与えられていれば幸いです。以上で終わります。ご清聴ありがとうございました。”
(以上です)

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忙しいなかビブリオバトルを開催してくれた図書館スタッフの方と、学生ボランティアの方に感謝します。
ありがとうございました。

これから書評みたいなものも増やしたいですね。